引き戸の選択、介護仕様住宅への考え方。



今回は我が家のバリアフリーというか、設計にあたって将来をどのように考えたかを紹介したいなと思います。

私の息子は生まれながらに難病を患っております。現在は元気に成長してくれていますが、設計時にはいつどのような介護が必要になるのか分からない状態で設計を進めた経緯があります。その中で私が考えた将来に対する家の備えの紹介になりますね。

簡単にバリアフリーと言いますが介護をされる側の想定される状態によっても対策は違うものになりますし、私自身もかなり素人な知識で考えた結果ですのでその点をご考慮下さい。

引き戸の種類

引き戸には二種類のサイズがあるってご存知ですか?しっかり説明してくれる設計さんもいれば家が建って暮らしていてもサイズの違いに気づかない人もいるようですよね。一般的に特別な理由が無ければ間口の広いタイプの引き戸が採用されていると思います。

一条工務店 有効寸法資料 C地域 2015/11/4

このように資料にはそれぞれの扉のサイズと有効内寸法が記載されています。これはi-cubeのものですが意匠的な違いがあるだけで一条工務店の扉は恐らく同じ仕様かなと思います。

一般的な引き戸

色々な引き戸がありますが、一般的に居室などに使われるのはこの二種類の引戸かなと思います。

一条工務店 有効寸法資料 C地域 2015/11/4

資料を見て頂けると分かるようにC300とC311の2種類です。C100はガラス入りの引き戸ですね。

  • C300=有効幅員741ミリ
  • C311=有効幅員703ミリ

その差は38ミリです。私の手の小指の指先から第二関節ぐらいの長さです。本当にちょっとの差ですがギリギリに物を通そうと思うと大きな差になるのでしょうか?

今回の記事の目的

先日の記事において初めて我が家の全体的な間取りを公開しました。

この記事の後にある質問を頂いたんです。質問の内容はこのようなものでした。

採用している引戸は全てC311という有効幅員が狭い引戸のようですが、車椅子などを想定されているということなのに何故に幅員が狭い引戸を使用しているのでしょうか?

という質問でした。正直そこまで細かく見て頂いていると思っていなくて驚きました。そしていつか突っ込まれるのかな?とも思っていた件なので、これを機会に記事にしてみました。

それぞれの引戸がC311になった理由

洗面所の3方向引戸

まずは洗面所の左右にある脱衣所とトイレに向かう引戸です。こちらはパイプスペースを配置した関係で引戸の逃げ道が確保できずにC300が入りませんでした。

外壁部分に水道管を配置する場合にパイプスペースを配置したほうが良いのは冬季に気温が下がる地域に限っての事だと思いますが、予想外の凍結を防ぐためにもパイプスペースの設置は仕方のない事でした。

キッチンからの入り口に関してですが、後にお聞きするに手前にあるパントリー代わりの押入の存在によりC311が配置できなかったようですね。

主寝室入り口

こちらは主寝室入り口の引戸です。こちらは耐力の関係で大きなC300の引戸を採用できずにC311になっています。C300を採用すると壁の耐力が足りなくなるという理由で採用が不可能でした。我が家は平屋なんですが、1ユニットごとの大きさが結構なサイズなので扉にし窓にしろ予想以上に耐力が気になる場所があったんです。

洋室(子供部屋)入り口

こちら子供部屋の入り口ですが、ここはC300の引戸でもOKだったんです。しかし戸袋の先が机を置く予定の場所の壁になっています。息子が勉強机などを置いた際に正面の壁を最大限に使いたかったことが最大の理由です。この部屋は3枚引戸を使ったりしているので壁が本当に少ないんですよね。ここは貴重な壁だったためにあえてC300を使用せずにC311の引戸を採用しました。

車椅子を想定するならそれで良かったのか?

間取りを決めるにあたりC300の有効幅員の広い引戸を採用できるように間取り変更をすることは勿論可能でした。しかしそれによって叶わない間取りも沢山ある訳です。我が家におきましては下で述べる考えによりそこまでの必要は無く、条件を満たした引戸であればC311でも十分に対応が可能かなと思いました。

車椅子という想定をどこまで出来るのか?

私が間取りを本格的に考えだしたのは息子の病気が判明して、そろそろ本気で家造りを始めたいなと考えた頃でした。そして息子の発作発症後の予後を心配して単純に身体の自由が利きにくい=車椅子やバギーでの生活という安易な考えからでした。

平屋とい選択は息子の病気や予後を心配する前から妻と話していた第一希望でもありました。そして私達夫婦の考えは車椅子が通過しやすいように廊下部分を極力減らしたり、トイレ介助をしやすいように広くしたり、わりと一般的に考えられる安易なバリアフリー住宅に対する考えしか持っていなかったと思います。

息子の病気の事は多くは触れませんが、片側巨脳症という難病による予後は決して簡単なものではなく、そして脳の病気は個人差がとても大きく、同じ病名の患者さんでも日々の過ごし方には大きな差があります。ブログを通して知った方々や資料を読み漁ってもその症状や予後はまちまちで想像のしようがありませんでした。基本的に難病に指定されているだけあって、根本的な治療法がなく一生付き合わなければならない不治の病な訳です。

事実として息子が1歳の誕生日を目前にして発作を発症して入院した際には数ヶ月後にどのような状態になっているのか本当に分からない状態でした。将来的な不安を抱えながらも、打ち合わせを進める間に息子の状態は奇跡的に発達などにもほとんど影響が無さそうに見えて日々の生活を過ごせている状況でした。将来的にはどうなるか分かりませんでしたが、とりあえず室内全体を車椅子で歩き回るような過度な想定はもう要らないんじゃないか?と途中から思いながらの設計でした。

今後のもしもの場合への備えはどうなの?

ここから先は手探り状態でした。まずは車椅子などで外から帰ってきたら室内まで移動する手段があれば後は何とかならないかな?と考えました。

つまり玄関で車椅子のタイヤを拭く、降りる、もしくは室内用の車椅子などに乗り換えてLDKまで移動出来ることで十分かなと考えました。なので玄関ホールに設置したLDK入口のドアは親子ドアが必須でした。逆にLDKからトイレなどに自分で移動できないような状況なら既にオムツなどを利用してトイレ介助なども必要ないのかなと。お風呂なんかも素人が入れるのは物凄く大変な事で、逆にデイサービスなどの公共サービスを利用したほうが安全という資料も見ました。

車椅子やバギーの幅って知ってますか?

お店や公共施設にある車椅子は別にして、自分専用の車椅子やバギーを利用する際はみなさん使用者の状態に合わせてカスタマイズされている様子でした。身体を支える事が出来ないために使用者の状態に合わせてサポートなどを合わせる必要もありますしね。

決して多くの資料を読み込んだ訳ではありませんが、一般的なサイズでいうと幅は60センチ前後で足りそうかなと思いました。よって、引き戸の間口が広い事に越したことはありませんが、重要なのは間口の広さではなくて、手前で転回できる場所があり扉に対して真っ直ぐに入っていけるかどうか?という事なのかなと思いました。これは実際に車椅子を使っている方から聞いたお話でもあります。

こちらの洗面所はLDK方面から入った後は転回するスペースは確保したつもりです。脱衣所はには行かないかもですが、トイレには何とか入れるのかなと思います。その際には一条工務店の洗面台は洗いにくいと思いますが、スロップシンクであれば車椅子も入り込める構造なので手なども洗えるのかなと思います。

※参考資料

スロップシンクはこのような形状なので、若干ですが車椅子で下に入り込むことが出来ます。

主寝室への入口は問題がないように思います。

洋室(子供部屋)への入口も完全ではありませんが玄関ホールに1.5グリッド幅を確保しました。両側にも十分なスペースがありますし転回することは可能かなと思います。土間から落ちないようにだけ気を付けないといけませんね。

廊下の幅はどう考える?

我が家は予算面からくる建坪の問題で廊下を作らないように設計をしました。一般的に1マス幅の廊下は介護などの仕様には厳しいと言われますよね。しかしながら実際には1マス幅の廊下は普通に真っ直ぐ進む分には問題ないのではないか?と思うんです。

問題になるのは曲がる際に車椅子などを転回するスペースの確保と、安易に手摺を設置した時に廊下の有効幅が狭くなってしまう事なのかなと思います。

なので、手摺を取り付ける事がないと思えるのならば1マス幅の真っ直ぐ廊下は決して使いにくいものではないのかなと思います。また、手摺を取り付ける際にも壁補強などをしておけば一番良いのですが、実際には大きな力が掛かりますので0.5マス毎にある構造体に手摺の土台を取り付ける事が多いようです。壁補強部分に手摺を取り付けると重さに耐え切れずに結局構造体に取り付けるようになる事があるみたいですね。

なので、手摺に対する壁補強というのはそこまで過度に対応する必要は無いのかなと思いました。あればそれに越したことは無いと思いますけどね。

介護仕様の住宅は簡単には作れない

バリアフリーというか介護を考えた家づくりというのは本当に難しいです。それこそ介護される側がどのような状態かによって想定は千差万別だと思います。全ての想定を考えてオールバリアフリーの家を作ることは理想ではありますが、現実には敷地の広さ的な制限があり、間取りの制限があり、予算面の制限があります。

我が家の仕様だって車椅子や介護を考えるとか言っておきながら引き戸の間口は狭いし、トイレもダイレクトに入ることは出来ないし、玄関にスロープも作っていません。我が家の力では広い家もスロープを十分に確保できる敷地も確保出来ないんですからしょうが無いんです。

スロープに関しては一応後で作成出来る可能性を残して外構計画を立てておりますが、折りたためる簡易スロープのようなものも有りますので現状では作る必要は無いのかなと思っています。また簡易スロープ的な物はデイサービスなどを利用する際には業者さんが持っていたりする場合もありますしね。

介護に関わるリフォームについて

介護に関わる設備は一定の条件を満たすと介護保険でリフォームに関わる補助も出ます。また各自治体において住宅リフォームなどに関する支援もされているようなので確認してみるのも良いですよね。

間取りで理由を考えて妥協した点

我が家の主寝室と子供部屋が遠くて介護とかに際には心配で大変なんじゃない?っていうご指摘も間取り設計当初から頂いておりました。確かにその通りだと思うんです。

私は子供が寝る時に近くで様子を見ていないと心配な状況であれば別々には寝ないと考えました。もしもそんな状況なら一人にさせておけんでしょう。突然の発作が起こることは息子にとって一生つきまとう懸念材料でありますが、その為に一生側に付き添っているわけにもいきませんし。

別々に寝れない状況の際には主寝室か子供部屋に介護用ベッドでも置いて片親が横で寝ながら様子を見るようなことを考えました。その雨に主寝室の照明案なども検討した経緯があります。

そのような際にはもう一方の片親は逆に離れた場所で寝れた方が良いのではないか?と考えました。長期にわたる介護は大変な作業だと思います。私か妻か、片方が世話をして片方は離れた場所でゆっくりと休める環境を作れるほうが長期的に考えると良いのではないかと思ったのです。

我が家の理想である開放感のあるLDKなどを優先した結果離された子供部屋ですが、逆にこのような考え方をすると良い理由づけになるのかなと思い自分を納得させました。間取りの制限、予算の制限により最低限の部屋数で別れた2部屋ですがこういう理由があると思うと私達夫婦には納得ができました。

後悔しても納得できる間取りを考えましょう

ほとんどの人が初めての家造り、人それぞれの生活があり皆さん自分たちの将来を考えて家造りをされると思いますが、絶対に想定外のことは起きるでしょうし失敗や後悔も出てくることでしょう。

しかしそんな時にも大事なことは、設計時にどこまで想像力を膨らませて起きうる事態を想定し心の準備が出来ているか?だと思います。間取りで希望の事が叶わない事もあるでしょう。でもそれによって良いことも出てきませんか?それを考えたら最初の希望を諦めることは出来ませんか?物事は考え方の方向を変えるだけで全く違う見方が出来る事もあると思います。もちろん譲れない希望は押し通すべきです。その為の注文住宅なんですから。

暮らしていて後悔することがあっても、あの時あれだけ考えたんだから、それでも準備が出来なかったんだからしょうが無いね、あの時の自分たちではどうやっても準備できなかったんだからと納得できる家造りが出来ると良いなって思います。

その為に必要なのは既にお住いの方の内覧会であり、住んだ後に感じる後悔だったり良い点だったり。感じ方が人それぞれな事もありますが、こういう感じ方もあるんだなと私もいつも楽しみに拝見しています。なので更新頻度が減っても引き渡した後の方の記事の方が私は楽しみだったりしますし、良い家造りへの一番の参考資料だと思っています。

これから打ち合わせをされる方は、楽しくも苦しい打ち合わせもちょっとの間なので頭をフル回転して頑張って下さいね。